轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ヤトラカン・サミはかせのいす

ヤトラカン・サミ博士の椅子

牧 逸馬

「新青年」博文館、1929(昭和4)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,010 字 · 26 页

青空文庫

この、ヤトラカン・サミ博士の椅子車というのは、腰かけるところも、両脚も、うしろの寄りかかりも、すばらしく大々とした珍しいもので、ちょうど女がひとり、股を広げてしゃがんで、上半身をまっすぐに、両手を前へ伸ばして、まるで、ヤトラカン・サミ博士を背後から抱擁しているように見える、特別のこしらえだった。どこからどこまで、幅の広い、分の厚い、頑丈な、馬来半島渡来の竹籐で籠編みにできていて、内部は、箱のようになっているらしかったが、表面は、全体を雲斎織で巻き締めてあって、上から、一めんに何か防水剤のような黒い塗料がきせてあった。そして、それに、小さな車輪と、運転用の鉄の棒とが付いていた。博士は、まるで躄のようにこの椅子車に乗ったまま、自分で動かして、外国人のいそうなところは、ピイ・ノオ汽船会社の前でも、デヒワラ博物館の近くへでも、どこへでも出かけて行った。椅子の背中には、鍋、マッチ、米の袋、罐入りのカレー粉などが、神式の供え物かなんぞのように、いつも大げさに揺れていた。これらが、そして、これらだけが、博士の生活必需品の全部だった。煙草は、いぎりす旦那の吸いがらを路上で拾ってのんだし、夜は、肉桂園へ移動椅子を乗り入れて、椅子の上に円く膝を抱いて、星と会話し、草や風と快談して毎朝を迎えた。