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ラクダイよこちょう

ラクダイ横町

岡本 良雄

「銀河 3巻2号」新潮社、1948(昭和23)年2月

N4 · 入门 · 新字新假名 · 6,189 字 · 13 页

青空文庫

――おもしろいな。

――ふしぎだな。

――なぜだろう。

これが、いのきちがおぼえている、第一番めのおどろきであった。つづいて、日本海の石におどろいたのが第二番め―。そして、第三番めは、それからずっとあとになって、いまのミルクホールに働くようになってから、また新しいおどろきが、いのきちをおどろかせたのであった。――というのは、あの日、はじめて海を見たときから、いのきちの心はもう、山をはなれていた。うごかない山。空のむこうに、空の見えない山。そして、六年生をおわると、とうとう、がまんがしきれなくなって、町にでたいと、せがんだのであった。

「おじいさんや、そのまた、おじいさんのむかしから、ずっと、この村に住んできたのに、どうして、おまえは、ここがいやなのだ。」

父は、こういって、なげいたし、

「町にでても、だれひとり、しった人もないのに……。」

母は、しんぱいでたまらない、というふうであった。

「ほんとうに、いのきちは、かわりものになったのう。」

近所の人もみんな、こういった。けれども、ただ、みよこのうちのおじさんだけが、いのきちの考えにさんせいしてくれた。