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ウィタ・セクスアリス
ヰタ・セクスアリス
「昴」1909(明治42)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,941 字 · 119 页
僕の書いたものは、多少の注意を引いた。二三の新聞に尻馬に乗ったような投書が出た。僕の書いたものは抒情的な処もあれば、小さい物語めいた処もあれば、考証らしい処もあった。今ならば人が小説だと云って評したのだろう。小説だと勝手に極めて、それから雑報にも劣っていると云ったのだろう。情熱という語はまだ無かったが、有ったら情熱が無いとも云ったのだろう。衒学なんという語もまだ流行らなかったが、流行っていたらこの場合に使われたのだろう。その外、自己弁護だなんぞという罪名もまだ無かった。僕はどんな芸術品でも、自己弁護でないものは無いように思う。それは人生が自己弁護であるからである。あらゆる生物の生活が自己弁護であるからである。木の葉に止まっている雨蛙は青くて、壁に止まっているのは土色をしている。草むらを出没する蜥蜴は背に緑の筋を持っている。沙漠の砂に住んでいるのは砂の色をしている。Mimicry は自己弁護である。文章の自己弁護であるのも、同じ道理である。僕は幸にそんな非難も受けなかった。僕は幸に僕の書いた物の存在権をも疑われずに済んだ。それは存在権の最も覚束ない、智的にも情的にも、人に何物をも与えない批評というものが、その頃はまだ発明せられていなかったからである。