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ヴアン・ダインのさくふう
ヴアン・ダインの作風
平林 初之輔
「改造 第一二巻第一一号」1930(昭和5)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,370 字 · 5 页
四
彼の作品は架空的な物語の筋を図式的にこんぐらがらせ、発展させていっただけのものではない。それに充分な肉付きを与え外的事件の過程とともに内的心理の過程をも見逃さないようにしている。しかもそれは単にトリックに必要なためにそうしているのではなくて、それが彼の全体の作風となっているのだ。ここに彼の作品に、一味の現実味とまた芸術性とを与えている理由がある。それと同時に、馬鹿々々しいアメリカの探偵小説界においてあれだけの人気を博した理由がある。人気というものはちょっとしたことが機縁になるもので、あまり読者をあまく見て、読者の人気に故意に投じようとしたって決して生まれるものでない。
ちょうど大仏次郎氏の『赤穂浪士』が日本の大衆文学界で人気を集めたのもこれと似ている。氏はこの作において、大衆文芸の従来のレベルを少し高めて、それに芸術性と現実性とを与えた。それが人気に投じた。しかし大仏氏の作品はまだまだ妥協的であるが、ヴァン・ダインの探偵小説には妥協がない。全身的だ。低い読者を頭の中においているようなところがない。そこが彼のよいところである。
四
彼の作品にはわざとらしい伏線がない。