轻松读懂日语经典作品
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ひとつのできごと
一つの出来事
宮本 百合子
「大観」1919(大正8)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,024 字 · 23 页
ユダヤ人だからではない、すべてこちらのあまり教養のない人間はそうなのである。
それ故私の無干渉主義は、立ち入った一度の交渉なしに今日まで進んで来たのである。
ところがちょうど昨夜、もうかれこれ十時近い頃であったろう、二階へ誰か女が訪ねて来たらしい様子がした。何かしきりに相談でもしていると見えて、開け放した階子口(はしごぐち)の戸を通して聞える声は、珍らしく真面目である。けれども、何を話しているのか内容は分らない。ただ空気を截(き)って虫が飛ぶように、ヒッシュヒッシュという力強い語尾だけが、連続した断音となって鼓膜を打つのである。
かなり男性的な抑揚をぼんやりと耳にしながら、仕事を仕続けていると、前から聴いていたのだろうGが突然、
「おや、あの人達はまた誰かに部屋を貸すんですね」
と云った。
彼の拾い集めた断片によると、下のユダヤ人の母親は、借りた二階のどの部屋かを、また今来ている女に貸す相談をしているのだそうだ。私はそれを聞くと、利口なものだなと思わずにはいられなかった。
お爺さんお婆さんは、新来の彼女等にいくらでも高価(たか)く自分達の部屋部屋を明けわたして利益を得ようとする。