轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ひとつのあいじょう

一つの愛情

豊島 与志雄

「新小説」1949(昭和24)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,635 字 · 22 页

青空文庫

御嬢様の御病状なんにもわかりませず、ただ気ばかりもんで切のうございます。

私は御嬢様の御病気御平癒を一生懸命御仏に念じております。私は今すぐ死んでもかまいませぬもの。そのかわり、御嬢様の御病気を一日も早くお癒し下さいますよう、御仏に念じております。

御大切な御嬢様、先生の御心をお思いしてたまらなく胸が痛みます。悲しくて切のうございます。

吉岡信一郎の娘が病死した時、葉山紀美子から、文脈乱れがちな短い哀悼の手紙と香奠とが来た。そしてそれからぷっつり、彼女の手紙はとだえてしまった。吉岡から二度ばかり出した手紙にも返事がなかった。紀美子もどこかへ消え失せてしまったような感銘を、吉岡は受けた。

それもよかろう、と吉岡は思った。彼女に対する感情は、恋愛というほど生々しいものではなかったけれど、或る意味ではもっと深い愛情だったようでもある。実体の捉えにくいなんだか抽象的なものだっただけに、却って、何の濁りもなく、すっきりと心中に残った。或はそれが、彼女の心の投影だったかも知れない。彼女はただ一徹で純粋で、肉体的な濁りを持たなかった。彼女自身、彼にとっては、謂わばその手紙が全部だった。