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ひとつのあいじょう

一つの愛情

豊島 与志雄

「新小説」1949(昭和24)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,635 字 · 22 页

青空文庫

それだけが私の心に仕合せな夢見心地を与えます。

――――

私はたまらなくて、またお手紙致します。先生は、私がいやになったということさえ、もう仰言っては下さらないのでございましょうか。お願いでございます。そのこと一言仰言って下さいませ。早く早く、一刻も早く、それをきかして下さいませ。私は今すぐ、それがききとうございます。御返事がくるまで何日待っていなければならないのでございましょうか。私はもう一日も待てませぬ。一分間も一秒間も待てませぬ。お願いでございます。はっきりこうだというお言葉下さいませ。すぐに下さいませ。

――――

御嬢様御病気のこと、たまらなく胸が痛みます。

どのように御心痛の御事でございましょう。私の命にかえてと、泣きながら御仏に念じております。どうか御気を張り、病気などにお負け遊ばさないで下さいませ。私は昔、肋膜に沢山水がたまり、熱が四十度、息が出来なくなり、ほんとうに恐ろしゅうございました時、真暗闇の死の底に落ち込むのがこわくてたまらず、も一度起きてあの太陽の光の中を歩きたいと、夢の中であがき念じましたため、死からのがれることが出来ました。