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いっすんぼうし

一寸法師

江戸川 乱歩

「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页

青空文庫

これなどもその一つだがね」

彼は卓上の妙な石膏のかけらを、指紋をつけない様に注意してつまみ上げた。

「これがやっぱり、夫人の部屋の押入れの奥から出て来たのだ。ショールなんかにくるんで小箪笥のうしろに隠してあったのだ。もっともこれは破片を一つだけ持って来たので、高さ一尺ばかりの石膏像のこわれたものが、すっくりそこにあったのだがね」

紋三は困った様な顔をして、明智を見た。

「イヤこういったばかりでは分るまいが、それについては先ずこのヘヤーピンを研究して置く必要がある」明智は曾てピアノの中から発見した、束髪針を取上げた。「探偵小説のソーンダイク博士ではないが、こいつには顕微鏡的検査が必要だった。僕はそういうことは一向不得手なので、友人の医者に頼んで見てもらったのだが、このピンの頭がひどくゆがんでいる。何か角のあるものでたたきつけた跡だ。で、僕は家へ持帰って明るい所でよく検べて見たところが、折れ曲った部分に白い粉がついている。なおよく見ると、生地が黒いのでよく分らないけれど、何だか血痕らしいものも附着している。それは今でもよく見れば残っているがね。その粉と血痕を削り取って顕微鏡で見てもらった結果は、粉の方は石膏と何か染料が混っているらしい。