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いっすんぼうし

一寸法師

江戸川 乱歩

「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页

青空文庫

どうもブロンズに塗った石膏細工の粉だろうというのだ。血痕の方は人間の血に相違ないことが分った。そこで、山野の邸にブロンズの石膏像があったかどうかを調べる必要が生じた。だがこれはやっぱりお雪の証言によって苦もなく分った。三千子さんの書斎の棚の上に、首だけの青い像がのっていたというのだ。それには厚い台座がついていたので、投げつければ、当り所が悪ければ、人を気絶させることも、場合によっては殺すことも出来るだろう。山野夫人の部屋の押入れから出た石膏のかけらには、恐しく血痕がついていたのだから、台座の角が頭に当って、被害者は脳震盪を起したものに相違ない。そういう訳で、夫人の部屋で発見されたこの石膏のかけらは、いわば今度の殺人事件の兇器に相当するのだよ」

「それだけ証拠がそろっていても夫人が下手人でないというのですか」

「ないとはいわない。断言するのは少し早計だと思うのだ。この事件は見かけは簡単の様だけれど、その実かなりこみ入っている。先にいった怪物が関係しているだけでも、かなり特異な事件だ。一寸法師が生々しい片腕を持歩いたり、百貨店の飾り人形に死人の腕が生えたり、妙に常軌を逸した、人間らしくない所がある。