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いっすんぼうし

一寸法師

江戸川 乱歩

「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页

青空文庫

そして、決して犯人ではないということも。第四は今未決監に放り込まれている、可哀相な北島春雄ですが、この男が犯人でないことは最初から分っております。それは当日外部から忍び込んだ形跡の絶無だったことの外に、彼が犯人とすれば、兇行に石膏像なんかを使用するはずもなく、ピアノやゴミ箱の様な手数のかかる方法によって死体を隠匿する理由もない訳ですから。第五は運転手の蕗屋が、事件の翌日国へ帰ったためにやや疑われておりますが、彼は三千子の恋人で、彼の方で三千子を嫌っていた様子もなく、一寸殺人の動機がありません。のみならず、私はこの男の所在をも突止め、彼が犯人でないことを確めることが出来たのです。つまり五人の嫌疑者の内には一人も真犯人のいないことが分ったのであります」

明智は例によって、思わせぶりな物のいい方をした。これが彼の探偵生活での、いわば唯一の楽しみなのだ。併しそれが聴手の好奇心を刺戟した効果は大きかった。彼等は煙草を吸うことさえ忘れて、小学生の様に明智の滑らかに動く脣ばかり見つめていた。

「ところが、ここにもう一人、第六の嫌疑者が現れました。それはたった今、私の部下が山野夫人と小林君のあとをつけて、夫人の告白を聞いて確めることが出来たのです」