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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
家人を遠ざけて口も利かない日が続きました。それから、不具者が夫人に送った脅迫状の中には、山野氏の名前が記されていたのです」
彼は台の上の例の焼残りの手紙を取って、それを手に入れた径路、文面等を説明した。
聞手は凡て意外な顔色であった。たった一人、安川国松だけが、明智の話も耳に入らずブルブルふるえていた。
紋三も最初は意外な感じがした。いよいよ間違いないと思っていた山野氏まで犯人でないとすると、最早疑うべき何人も残っていないのだ。一体全体明智は何を考えているのか。彼は今夜真犯人を引渡すと公言している。ではその曲者はこの安川の家にいるのであろうか。まさかあの人形師がその犯人ではあるまいな。だが、そんな風に色々と考えている内、ふとある驚くべき考えが、彼の頭をかすめた。彼は驚愕と喜悦の為に、顔が真赤になった。
「あの写真だ。明智があの写真を見て、つまらないおしゃべりをした。あれだ。あれをもっとよく考えて見ればよかったのだ」
それは曾て明智の机の上にあり、今はそこの台にのせてある、山野の家族一同の写真だった。明智がなぜあの写真を意味ありげに取扱ったか、その訳が今こそ分ったのだ。