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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
「朝の間に出て行かれた様なことはありませんか」
「それは、小間使の小松と申しますのが、朝の郵便を持って参りまして、三千子のベッドの空なことが分ったのですが、その時分はまだ表の門を開けないで、書生が玄関の所を掃いていましたし、勝手口の方もまだ締りをはずしたばかりで、女中共がずっと勝手許にいたのでございますから、とても知れぬ様に出て行くことは出来ません」
「お嬢さんが家出をされる様な原因も、別にないとおっしゃるのですね」
明智は質問を続けた。
「ハア、少しも心当りがございません。ただわたくしが継々しい仲だものですから、妙に邪推されはしないかと、それだけが辛うございますわ。ですから、わたくしの立場としましても、一日も早く三千子の安否が知りたいのでございます。こうして主人の留守中にこちらへ伺いましたのも、そんな訳で、わたくしじっとしていられなかったものですから」
山野夫人は、もう二三度もくり返した彼女の苦しい立場を、またくどくどと説明した。
「御縁談とか、外に何か恋愛という様なことはなかったのですか」
「縁談は二三あるにはあったのですけれど、どれも本人が気に染まないとか申しまして、まだ取極めてはおりませんし、外にも別に……」