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いっぽんのはな
一本の花
宮本 百合子
「改造」1927(昭和2)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,709 字 · 55 页
幸子の姉で、山口県へ嫁入っている人があった。
春、葡萄状鬼胎の手術を受けてから、ずっとよくなかった。最近容体の面白くない話があったところへ、或る日、幸子の留守、電報が来た。幸子が帰って、それを見たのは四時頃であった。
「こりゃ行かなくちゃならない」
「勿論だわ」
「旅行案内、私んところになかったかしら」
朝子は、今独りにされることは恐しくなって来た。
幸子が帰って来る迄に、自分は今の自分でなくなってしまっている。――そんな予感がした。
朝子は、
「私も行っちゃおうかしら」
と云った。
「一緒に?」
「うん」
「そりゃ来たっていいけど……」
幸子は、旅行案内から眼をあげ、
「駄々っ児だな。まだ雑誌も出ないじゃないの」
と苦笑した。
「駄目だ、仕事を放っちゃいけない」
校正がまだ終っていなかった。然しそれはどうにもなることであった。暫く考えた後、朝子は、
「私、行く」
と、椅子から立ち上った。
「今独りんなると碌なことをしないにきまってる。いやだわ」
幸子には、いい意味でぼんやりなところがあり、朝子の動揺している心持を知っていても、実感としては、わからないらしかった。彼女は、