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まんのし
万の死
小川 未明
「新児童文化 第4冊」1949(昭和24)年11月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,457 字 · 9 页
」と、母は、またつづけて、
「しかし、金持ちにはかなわないんだね。仕事をさせてもらわなければならぬし、いつしかぺこぺこ頭を下げていくようになったよ。」
「問屋って、あの町の袋物屋ですか。大きい店なのに、そんな金がないわけでなし、どうしてだろうな。」と、万が聞きました。
「どうして。大金持ちだというけれど、もとは、みんな貧乏な人たちをできるだけ安く働かして、もうけた金なのだから、考えれば、私どもは、ちっともうらやましいことはないのさ。」と、母親は、針を燈火に近づけて、指をはたらかしながら、いいました。このとき、万の目には、涙が光っていました。
その後、万は、いくたびも町へ出て、袋物屋の前を通りました。そのたびに、ここの家だなと、思って、中をのぞきました。たいてい、客が入っていてなにか見ていました。そして、めったに主人の顔を見なかったが、あるとき、四角な顔をした、それらしい男が、おうへいな言葉つきで、人と話をしていました。よく注意すると、昼間から酒を飲んだとみえて、いい顔色をしていました。相手を小ばかにするのは、やはり、こちらがなにか頼んでいるからでしょう。