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さんにんのそうせいじ
三人の双生児
海野 十三
「新青年」1934(昭和9)年9、10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 43,806 字 · 87 页
さらに驚くことは、この懐姙した胎児について、誰がその父親であるのか、妾には全く見当がつかないことである。妾は全く身に覚えがないのに、このように姙娠してしまったのである。乳首は黝ずみ、下腹部は歴然と膨らみ、この節ではもう胎動をさえ感ずるようになった。婦人科医の診断もうけたが紛れもなく姙娠しているのだった。――相手もないのに身ごもるなどという不思議なことが、今の世にあってよいものであろうか。
妾は早く貞雄に会って、このことについて教えをうけたいと思う。彼のような卓越した学者ならねばこの神秘の謎は解けないであろう。日を繰ってみると、妾は彼が身体の健全を保証していってくれたその直後に受胎したことになるのである。といって彼は決してその胎児の父ではないと思う。なぜなら貞雄は非常に潔癖で妾の家に一泊することすら断ったほどであり、もちろん妾は一度たりとも彼を相手にするようなことはなかった。いや貞雄ばかりのことでない。その外の男という男についても同じことが云える。妾は絶対に誓う。妾は男を相手にして、懐姙の原因をつくるような行いをしたことは一度もないのだ。しかし姙娠していることは、どこまでも厳然たる事実なのであった!