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さんじゅうねんごのせかい

三十年後の世界

海野 十三

「少年読売」1948(昭和23)年3~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页

青空文庫

あれなんか、空気浄化器の一つなんですよ」

「ああ、あれがそうなのですか。広告塔と空気浄化器と二役をやっているのですか」

十メートルくらいの高さの美しい広告塔だった。赤、青、紫、橙、黄などのあざやかな色でぬられ、そして、ぐるぐると回転している、目をうばうほど美しい塔だった。

「それから湿度は四十パーセント程度に保たれています。ですから、これまでの地下のようなじめじめした感じや、むしあつくて苦しいなどということもありません。また温度はいつも摂氏二十度になっていますから、暑からず寒からずです。年がら年中そうなんですから、服も地下生活をしているかぎり、年がら年中同じ服でいいわけです」

「それはいいですね。衣料費がかからなくていいですね。昔は夏服、冬服なんどと、いく組も持っていなければならなかったですからね。ちょうど布ぎれのないときでしたからぼくのお母さんは、それを揃えるのにずいぶん苦労をしましたよ。――ああ、そういえば、ぼくのお母さんは……」

と、正吉は声をくもらせて、はなをすすった。

「どうしました、正吉さん」

と、大学病院長のサクラ女史が、うしろからやさしく正吉の顔をのぞきこんだ。