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さんじゅうねんごのせかい

三十年後の世界

海野 十三

「少年読売」1948(昭和23)年3~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页

青空文庫

昔は、にぎやかな町ほど、砂ほこりが立ち、紙くずがとびまわり、路上にはきたないものがおちていたものだ。

しかし、この町はほこりは立たず、紙くずはなく、路面ははだしで歩いても足の裏がよごれないように見えた。

町は、天井が高く、路面から三十メートルはあったろう。そして、その天井は青く澄んで、明るかった。まるで本ものの秋晴れの空が頭上にあるように思われた。

「あの天井には、太陽光線と同じ光を出す放電管がとりつけてあるのです。その下に紺青色の硝子板がはってあります。ですから、ここを歩いていると昔の銀ブラのときと同じ気分がするでしょう」

「ああ、あれはほんとうの空じゃなかったのですか――うん、そうだ。地面の中にもぐっていて、青空が見えるはずがない」

正吉は、うっかり思いまちがいしていたことに気がついて、顔があかくなった。しかし、それほどほんものの秋空に見えるのだった。

区長は、正吉を、りっぱな本屋につれこんだ。奥は住宅になっていた。いわゆるアパートメント式の住宅であった。そのうちの一軒の前に立った区長は、扉をこつこつと叩いた。すると中から返事があった。女の声だった。