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さんじゅうねんごのせかい
三十年後の世界
海野 十三
「少年読売」1948(昭和23)年3~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页
「やあ、兄さん」
「兄さん、お目にかかれてうれしいですわ」
「ああ、弟に妹か――」
といったが、正吉も全くへんな工合であった。弟妹に会ったようではなく、おじさんおばさんに会ったような気がした。
びっくり農場
思いがけない母親とのめぐりあいに、正吉少年はたいへん元気づいた。見しらぬ世界のまっただ中へとびこんだひとりぼっちの心細さ――というようなものが、とたんに消えてしまった。
「ここからどこへつれていって下さるのですか」
と、正吉はカニザワ区長やサクラ院長などをふりかえって、たずねた。
「君がびっくりするところへ案内します。ちょっぴり、教えましょうか。日本の新しい領土なんです。ハハハ、おどろいたでしょう」
「日本の新しい領土ですって。それはへんですね。日本は戦争にも負けたし、また今後は戦争をしないことになったわけだから、領土がふえるはずがないですがね」
「そう思うでしょう。しかしそうじゃないんです。君がじっさいそこへ行ってみれば分りますよ」
「近くなんですか」
「いや、近くではないです。かなり遠いです。しかし高速の乗物で行くからわけはありません」
正吉は区長さんのいうことが理解できなかった。