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さんじゅうねんごのせかい

三十年後の世界

海野 十三

「少年読売」1948(昭和23)年3~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页

青空文庫

「なんの警報」

といぶかう折しも、警報信号が消えて、電波にのった運転手の声がひびいた。

「たいへんです。マルモ隊長など九台の装甲車が、トロイ谷のところで、かいぶつの一団にとりかこまれてしまって、危険におちいっているとの無電がはいりました。すぐこの装甲車へ帰って来て下さい」

運転手の声は不安にふるえていた。

正に一大事だ。ぐずぐずしてはいられない。カンノ博士は一同をひきいて、洞門の外へとび出した。外はまっ暗だった。黒いうるしでぬりつぶしたような暗黒の世界だ。急に夜のとびらが下りたものらしい。

さて探検隊の前途には何があるのか。その恐ろしき怪物の一団とは何物の群であろうか。

トロイ谷

話は、すこし前にもどる。

トロイ谷へ向ったのは、マルモ探検隊長のひきいる二十五名の隊員で、九台の装甲車にのっていた。けわしい岩山を、いくたびか上ったり下りたりして、隊員の幹部にはなじみの深いトロイ谷へついた。

一同はしっかりと空気服をしめ直し、地上へ下りた。車の中からは、採掘具がとりだされ、めいめいの手に一つずつ渡った。これは圧搾空気ハンマーに似た形をしていたが、原子力で動くものであるから、長い耐圧管もなければ、ボンベもなく、構造はずっとかんたんになっていた。