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さんじゅうねんごのせかい
三十年後の世界
海野 十三
「少年読売」1948(昭和23)年3~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页
将棋のトーナメント競技を計画して、入会をすすめる者がある。
卓上ベースボールのリーグ戦をするメンバーを募集してまわる者がある。
おとなしいところでは、地球から放送されるテレビジョンによって、これから三ヶ月間に、編物講習を勉強しようと決心する者もあった。
正吉少年が通路を歩いていると、料理番のキンちゃんに、ばったり出会った。キンちゃんとは、しばらく顔をあわせなかった。二人は別に働いていたからだ。そのキンちゃんはにこにこしている。
「キンちゃん、どうしたの。たいへんうれしそうだね」
と、正吉が声をかけると、キンちゃんはいよいよ顔をくずしてげらげら笑い。
「うふッ。ちび旦那。わしんところが、えらい人気なんですぜ」
ちび旦那などと、キンちゃんは失敬なことをいう。が、なかなかごきげんよろしい。どうしたわけだろう。
「なにが大人気だというの」
「いや、実は、わしのところで、ちょっとした競走をはじめたんですがね。それが大繁昌なんで。みなさんがどっとおしかけてきてね、部屋の中がぎゅうぎゅうで、たいへんなんですよ」
「どういうわけで?」
「どういうわけでといって、つまり、わしの考えだした競争に人気がすっかり集まってしまったんですよ」