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さんじゅうねんごのせかい

三十年後の世界

海野 十三

「少年読売」1948(昭和23)年3~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页

青空文庫

その境界になるのが、この回転扉だ。そこでこの回転扉をまわして中へはいると、その奥には、またもや下へ下りるトンネルがある。構造は、さっきのトンネルと同じことで、まん中のところは『おすべり』ができるようになっており、両側には階段がついている。なかなか大仕掛だ」

「すると月人は、土木工事に優秀な腕前を持っていると見えますね」

「そうだよ。わしもたしかにそれを認める。月人は、あの寒冷で空気のない地面を持っている月世界に、自分たちの生命をつなぐためには、土木工事に上達しないわけにはいかなくなったんだ。つまり、月人は、土地を掘って、地中へ、地中へ、と下りていったんだよ。表面は寒冷でも中はずっと暖かいからね。それに、空気は月の表面からとび散ってしまったが、地中にはいくらかそれが残っていたのだ。だから月人は、地中深く姿を消し、そしてその子孫が今もなお生命をつないでいるんだ。全くけなげな連中だ」

モウリ博士は、力をこめて、そういった。月人を恐怖する博士も、これまでに月人がたどった運命と、忍耐づよい努力とには、同情し、敬意をもっているのだった。

「でも、おじさん。そればかりの空気ではたくさんの月人が暮らしていけないでしょう」