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さんじゅうねんごのせかい
三十年後の世界
海野 十三
「少年読売」1948(昭和23)年3~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 68,140 字 · 137 页
ここへおかけ」
博士は、にこにこと正吉の方へ笑顔を見せて、すぐそばの椅子を動かした。
「今、みなさんに、月人の話をしていたところじゃ。お前も話が分かるなら、聞いていなさい。きっと参考になるからねえ」
そういって老博士は、またみんなの方を向いて、手をふり顔をふりして、月人のふしぎな生活について語りだした。
「月人は、月の表面に、たくさんの出入口を作っている。そこから中へはいりこむと、もちろんそれはトンネルのようになっているんだが、斜めに掘ってある。左右は階段になっているが、まん中はよく滑るように、磨いた岩石の舗道になっている。つまり、これが子供の遊び場にある『おすべり』と同じ作用をするのだ。滑って、早く下へ行けるように考えてあるのじゃ。月人は、なかなか工夫をするのが上手だ」
そこで老博士は、正吉の方へふりかえった。正吉が熱心に聞いているのをたしかめると、にっこり笑って、また顔を正面に向け直した。
「滑り下りると、そこには一つの関所がある。重い回転扉のはまった球形の大きい洞穴みたいな部屋だ。つまりこの部屋は、空気の関所だ。それより奥は、空気が濃いのだ、手前の方は空気が薄い。