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さんじゅうねんごのとうきょう
三十年後の東京
海野 十三
「少年読売」1947(昭和22)年10~12月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 13,731 字 · 28 页
すると中から返事があった。女の声だった。
「あっ、あの声は……」
扉が内にひらいた。家の中から顔を出した白髪頭の老女があった。
「まあ、これは区長さん。それにサクラ先生に……」
「今日はめずらしい客人をお連れしました。ここにおられる少年に見おぼえがありますか」
区長にいわれて、老女は正吉を見た。
「まあ、正吉ではありませんか。うちの正吉だ。まあまあ、正吉、お前はどうして……」
老女は、正吉の母親であったのだ。
「お母さん」
正吉と母親とは抱きあってうれしなみだにくれました。
「お母さん、よく長生きをしていてくれましたね」
「正吉や。お母さんは一度心臓病で死にかけたんだけれど、人工心臓をつけていただいてこのとおり丈夫になったんですよ」
「人工心臓ですって」
「見えるでしょう。お母さんは背中に背嚢のようなものを背おっているでしょう。それが人工心臓なのよ」
正吉は見た。なるほど母親は、背中に妙な四角い箱を背おっている。
それが人工心臓なのか。正吉は目をぱちくり。
口ひげのある弟
人工心臓は、ほんとの心臓と違って、人間のつくった機械だから、ずっと大きい。だから胸の中にはいらず背中にそれをくくりつけてある。