轻松读懂日语经典作品
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さんがいばんれいとう
三界万霊塔
久生 十蘭
「富士」1949(昭和24)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,716 字 · 39 页
自然界では、見えないところで無量の殺し合いをしているが、かつて刑罰を受けたことがない。われわれがマライタ島でやったことの百倍もひどいことをして、なんの改悔もなく、後生安楽な月日をゆったりと送れるというのはいったいどうしたというわけか。いうまでもなく、良心や、ちっぽけな内心の声にめげず、自分のしたことは、それがなんであろうとみな正しいという悟りの中から無限の力をひきだすからだ。良心であろうと神であろうと、自分がひそかに頼っているものを敵に見破られたら、そこを突かれて倒されてしまう。
「お客さまでございます」
「誰だ」
「おはじめての方でございますが、お逢いすればわかるとおっしゃっていらっしゃいました」
とうとうやってきたか。老いぼれのほうだろうか、若いほうだろうか。どちらでもかまわない。いっそお待ちかねだ。
「わかっている。広縁へ通せ」
深尾は広縁から座敷へあがると無関心な顔で椅子に掛けた。
「コニチワ。深尾サン、とうとうお目にかかりました」
思いきって意外な人物があらわれた。縁無しの近眼鏡をかけた、素朴な顔つきの二十五、六の外国人で濠洲兵の軍服に白のスパッツをつけ、手に持っていた、ボーイのような鍔広帽子を隅棚の上へ置くと、ニコニコ笑いながら手を差しだした。