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さぶろうじい

三郎爺

宮本 百合子

「東京日日新聞」1918(大正7)1月5日~17日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,866 字 · 50 页

青空文庫

そんなことをしながら、三郎はだんだん大きくなった。そして、多分十一二頃、隣村の何とかいう寺へ、お小僧に住込ませられた。

隣村といっても、その時分の隣なのだから、それこそ狐や狸の穴だらけな野原を越え、提燈のろうそくを掠める河獺(かわうそ)のいる川を越えた二三里先の村なのである。

そこへ字を習いに、毎日通ってはいられず、また、「お寺様への附届け」を十分するほど、子供に寛大になっていられなかった彼の親は、庭の掃き掃除、台所の手伝や小間使いを勤めるのと引き換に、「音信ぐらいは書ける」手習いを授けてもらうことにしたのである。

藁で小さいちょん髷(まげ)に結い、つぎだらけの股引に草鞋(わらじ)がけで、大きな握り飯を三つ背負った彼は、米三升、蕎麦粉(そばこ)五升に、真黒けな串柿を持った親父につれられて、ポクポクポクポクと髷には似合わず幅広な肩の上へ、淡黄色い砂埃を溜めながら、遠い路を歩いて行った。

そして、どこまでだか送ってくれた、遊び仲間が別れるとき急にあらたまって、

「行かしてごぜ……」

と、一斉におじぎをしてくれたときには、生れて始めて、「胸にはあ、おっちみるような心持」