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ふざいじぬし
不在地主
小林 多喜二
一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页
」
「馬鹿!」――母親はいきなり叱りつけた。
食えなくなった小作達は、だまっていても、伴のところへ代る代る集ってきた。小作調停のことは、それで思ったより早く纏った。
武田と佐々爺は「何んとか外にないか」「何んとかなア……」と云っていた。
伴外一名が代表になって村長へ「口頭」で、小作調停裁判を申請した。村長は「遅滞なく」そのことを旭川地方裁判所へ提出した。それが「受理」されると同時に、小作米の差押えが解除された。――小作人はどうかした拍子に「かなしばり」がとけた時のような身軽さを感じた。――「やれ、やれ。」
小作米は直ぐH町の「農業倉庫」に預け入りして、「倉荷証券」にした。それは何時でも現金にすることが出来るようになった。
「小作官」
道庁から「小作官」がやってきた。黒の折鞄を抱えた左肩を少し上げて、それだけを振って歩いた。伴の家へ上ると、茣蓙敷のホコリとズボンの膝を気にした。窮屈に坐った。話をききながら、「朝日」を吸った。――何本も何本も続けて吸う、しばらくもしないうちに、白墨の杭のように、炉の灰の中に殻が突きささった。
阿部が伴に代って、初めから順序をつけて詳しく話した。