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ふざいじぬし
不在地主
小林 多喜二
一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页
「ム――、それア、岸野さんにチィ――ト無理なところがあるね。」
「何がチィ――トだい!」
帰ってから、伴が小作官の真似をして、皆を笑わせた。――「あったらヘナヘナに、百姓のこと何分るッて!」
調停委員には「実情に通じた」その土地の「名望家」が選ばれた。――相馬農場の老管理人、H町々長、S村の校長など。
判事が「調停主任」になった。
「心細いな。小作人の本当の気持が分っていてくれる人無えんだものよ……。」
健が廻って歩いている小作の家でそう云うと、
「んでも偉い立派な人達だもの――ためになるようにやってけるべ。」
健はがっかりした。
第一回の呼出状が来た。
裁判所へ出ると云うので、伴はそう度々着たことのない着物をきて出掛けた。
「何んも似合わねえな――どうだ、似合うか?」
「熊が着物ば着たえんたとこだ。」
「熊?――可哀相に! ハハハハハ。」
「そう云えば、百姓って良え着物きたこと無えんだもの――似合うワケ無えさ。」
出掛けに伴が云った――
「これが駄目になったら、最後だど!」
誰と誰が繋がっているのか
恩を売った犬畜生奴! よくもこんな処さ持ち出して、赤恥かかしやがったな。