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ふざいじぬし
不在地主
小林 多喜二
一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页
「この恥ざらし!」
「んだから偉いんだとさ。」
健はだまった。
彼は自分の妹や母親のことでは、どの位阿部や伴に肩身が狭いかわからなかった。
十一
「千回もやってくれ」
第一回の「岸野小作争議演説会」が町の活動小屋で開かれた。――各農場相手に生活をしている町民や、他の農場の小作達も遠いところから提灯をつけてやって来た。
「割れる程」入った。
健は始めて「演壇」に上がった。壇へ上がると、カッと興奮してしまった。途中で、何を云ったか分らなくなってしまった。分らなくなると、周章てるだけだった。――時々、拍手と、「分った分った」「もうやめれ!」「その通り!」そんな野次の切れ端しを覚えているだけだった。下りて裏へ行くと、キヌの妹が、
「上出来だよ、健ちゃ!」と云った。
演説会は大きな反響を起した。――それから一週間もしないうちに、他の農場では争議を起されないうちに、(申訳ばかりだったが)小作料の軽減を行った。
然し岸野からは、「お前等が仮令千回演説会を開いても、蚤にさされたよりも、痛くも、かゆくもない。もっと元気よく、もっともっとやってくれ。」と云ってきた。