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ふざいじぬし

不在地主

小林 多喜二

一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页

青空文庫

を組織し、茲に労働者と農民の固き握手のもとに、此の争議に当ることになった。

農民を過去の封建的農奴的生活より、光ある社会へ解放し得るものは、都市労働階級の力だ。

農民が都市に出陣してきて、「労農争議共同委員会」を強固に組織し、かかる形態で地主と抗争する小作争議は、日本全国に於て、この岸野小作争議をもって最初とする。――農民運動の方向転換期にあるとき、且つ又急速なる資本主義の発展に伴う「地主のブルジョワ化」、従って都市居住地主――不在地主が、その典型たらんとしつつあるとき、この争議こそ重大な意義をもつものと云わなければならない。

情報、二

三日夜六時、小作人十五名出樽。小樽合同労働の約二百名の組合員の出迎えをうけ、直ちに岸野の店舗、工場、ホテル、商業会議所に押しかけ示威運動をする。元気。

(七之助の手紙。――停車場へ二百人近くも押しかけた。阿部さんも伴さんも驚いたらしい。眼に涙をためていた。面白いのは矢張り百姓だ。労働組合の人も云っていたが、こっちが感極まって、ワアッと云っても小作人達はだまっている。嬉しくないのかと思うと、そうでもないらしい。こっちで十しゃべると、それもモドカシクなる程ゆっくり三つ位しゃべる。