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ふざいじぬし
不在地主
小林 多喜二
一~十一、十六「中央公論」1929(昭和4)年11月号、十二~十五(「戦い」の表題で。)「戦記」1929(昭和4)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,990 字 · 141 页
」
荒川はだまってきいていた。
「あれだら、仲々我ん張るど。」
「あの面だものな!」
「そんな事……馬鹿だな……。」
「なんぼ岸野だって、こっちは兎に角人数は多いんだからな。」
「ハハハハハ、今度いくらでも実験できる時来るさ。」
荒川は愉快に笑った。
荒川は何時でも警察に尾行をつけられたり、何回も刑務所へブチ込まれたりしながら、この方の運動をしていた。――健もそれは聞いていた。然し、どうしてこんなに呑気そうに、愉快でいることが出来るんだろう。――健にはそれは分らなかった。
ロシア革命前と後とで、ロシアの百姓はどういう風に変ったか、それが百姓本来の要求にどんなにピッたり合ったか。――そういう話をきくと、自分達が実際にやっている生活のことで、しかも誰もがそれと気付かなかったことが、ハッキリしてきた。
次の朝は早いし、家が遠いので、健は中座した。
「小便たまった。」
阿部がついでに外へ立った。
「阿部さん、俺も一生ケン命やるから、何か用でも出来たら、させてけないか。」
健は興奮を抑え、抑え、阿部の顔を見ないで云った。――たったそれだけのことで、健は言葉が顫えそうでならなかった。