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ふしぎなるくうかんだんそう

不思議なる空間断層

海野 十三

「ぷろふいる」1935(昭和10)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,651 字 · 30 页

青空文庫

そんなわけだから、乃公はたいへんその妻君に同情して、機会あるたびに彼女を慰めてきたのだ。そのたびに妻君は、乃公を訪ねてきたときよりはいくぶん朗かになって帰ってゆくのだった。しかしこのごろかの友人は、自分の妻君と乃公の間を妙に疑っているらしい。それは実に莫迦げた腹立たしいことだけれど、二人きりで幾度となく、同じ屋根の下に居たということが、禍いの種となっているのだった。それは実に困ったことだった。

「その問題の妻君を、乃公は手にかけて殺してしまったのだ。ああ、どうしよう」

友人に会わす顔がない。殺した妻君には、さらに相済まない。それとともに、この事件によって、友人の妻君と乃公との間の潔白は、どうしたって証明することが出来なくなったのである。乃公は妻君の死体の傍に俯伏して、腸をかきむしられるような苦痛に責めさいなまれた……。

「……ああ、なんたる莫迦だろう。乃公はいま夢をみて泣いているぞ」

ふと、どこかで、自分が自分に云ってきかせる声が聞えた。なあんだ、ああこれは夢だったのだ。

入口ががたりと開いて、どやどやと一隊の人が雪崩こんだ。その先登には、妻君の横にいた美男子がいたが、乃公の顔をみると、ぎょっと尻込みをして、大勢の後に隠れた。