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ちゅうしゆうき
中支遊記
上村 松園
「画房随筆」錦城出版社、1942(昭和17)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,238 字 · 13 页
私は面白がってそのなかの一人の頭に手をやると、その唐子は驚いたようにして逃げて行ってしまった。
秦淮にて
楊州で画舫を漕いでくれた母親の方にはまだまだ昔の支那が残っていたようである。私は秦淮の街にスケッチに出かけて、そういう女も写したりした。そこには画舫も沢山浮き、古来多くの詩はそこの美しさをたたえている。それほどの名所でありながら、いまはきたない。江水も画舫も思う存分きたない。そこへ安物店の食べもの屋が出ているのである。
大きな傘を立てただけの店で、油揚げのようなものを売っている女。私は次々とスケッチして歩いた。
支那の人達は悠々としているという話は度々聞いている。雲雀を籠にいれて野山に出かけ、それを籠から出して大空に鳴かせあって日を暮らすという話などよく聞く。それと同じ気持なのだろう。こういう雑踏した街で、しかも角の真中に女が坐りこんで着物などのつくろいをしている。四辺はどうあろうともそこだけはぽかぽかと陽当りよく、余念もない女の針がひかっているのである。
物静かな京都の街なかでもこんな風にお前はお前、私は私といった風景はみられはしないであろう。