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『せっかずせつ』のけんきゅう

中谷宇吉郎集 第二巻

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第二巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:『雪華図説』の研究、『雪華図説』の研究後日譚、兎の耳、英国の物理学界と物理学者、温泉1、米粒の中の仏様、清々しさの研究の話、墨色、大謀網、長崎留学、鼠の湯治、民族的記憶の名残、室鰺、雪協議会の報告、真夏の日本海。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 83,098 字 · 172 页

青空文庫

勿論台所は棟ごとにあって、普通の台所道具は貸すようになっていたと思う。こういう点では、この木賃の制度は、今のホテルなどよりももっと合理的なものであった。多分昔の温泉宿というものはこの木賃が主であって、旅籠の客というのは、温泉宿へきて「旅籠」と同じようにやってくれという特殊の客であったのだろうと思われる。高等学校時代の夏休みに別府へ行った頃は、まだこういう湯治客が沢山きていた。狭い廊下が長く続いていて、その一側は中庭に面しており、他の側に沢山同じような部屋が並んでいた。そしてその中に年寄りだの、案外若い逞しい体格の男だのが、沢山いたような場面が記憶に残っている。

別府でも加賀の温泉などでも、こういう客が目立って減って行ったのは、いうまでもなく、欧洲大戦中の好況時代からである。一流の宿屋は都会の金のある客から、二流の宿屋は近村の遊蕩客からそれぞれ「浮いた銭」を儲けることが習慣になっては、湯治客などの介入する余地がなくなったのは当然である。そして、宿屋の主人同志は、ただじっとしておられない気持から、互に無理な増築をし、調度を贅沢にして、段々にその経営を自ら困難にして行った。