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『せっかずせつ』のけんきゅう

中谷宇吉郎集 第二巻

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第二巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:『雪華図説』の研究、『雪華図説』の研究後日譚、兎の耳、英国の物理学界と物理学者、温泉1、米粒の中の仏様、清々しさの研究の話、墨色、大謀網、長崎留学、鼠の湯治、民族的記憶の名残、室鰺、雪協議会の報告、真夏の日本海。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 83,098 字 · 172 页

青空文庫

昨年東北のある温泉へ行った時聞いた話では、今でもごく辺鄙な温泉場には、この習慣が残っているそうであるが、少し汽車の便の良い所ではほとんど絶えてしまったということであった。夏の農閑期は登山や避暑の学生達とかち合い、冬の休み時はスキー客におされて、もはや農村の湯治客などの介入する余地は、かなりの辺鄙な山の温泉地にも残されていないようである。これは単に直接の経済的の問題ばかりでなく、「都の人」が沢山くるようになっては田舎の特に老人たちは、そんなところへ割り込んでも、何となく「卑下」されて落付いて逗留などは出来なくなるのであろう。

とにかくこういう意味での湯治の制度が、一番大規模にそしてよく利用されていたのは、何といっても別府であろう。もっともそれも欧洲大戦までのことであって、近年はずっとすたれてしまったことは勿論である。二十年前には、別府の宿屋では、初めに女中がよく「木賃にしましょうか、それとも旅籠になさいますか」と聞きにきたものであった。旅籠というのは普通の食事附の泊りで、木賃というのは自炊の制度であった。部屋代は畳一畳についていくら、蒲団はいくらという風にきめてあって、自炊といっても、御飯と簡単な惣菜くらいは宿屋で売っていたので、それで食事を済ますことも出来た。