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『ケプロン・くろだのこうそう』について
中谷宇吉郎集 第八巻
中谷 宇吉郎
中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第八巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:『ケプロン・黒田の構想』について、桂浜、北国の春、金鱗湖、高度八十マイル、写真と暮らした三十年、寅彦の遺跡、南極・北極・熱帯の雪、百科事典美談、北海道開発に消えた八百億円、母性愛の蟹、娘の結婚、雪の化石2、六三制を活かす道、ピーター・パン。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,890 字 · 178 页
桂浜
漱石の俳句の中に
寅彦桂浜の石数十顆を送る
涼しさや石握り見る掌
という句がある。如何にも涼しさのあふれる名品である。そしてその涼しさの中に、寅彦の漱石に対する思慕の情と、漱石のそれに応えるこころとが、感じとれる。
この句は、明治三十二年の作で、当時漱石は五高で英語を教えていて、寅彦はその愛された生徒の一人であった。この年の夏、寅彦は五高を卒業して、東大の物理学科に入学した。桂浜の石を贈ったのは、多分その夏休みの時であろう。
寅彦先生の逝去以来、一度墓参りをかねて、高知を訪ねたいと思っていたが、戦争や終戦後の混乱に災されて、その折がなかった。ところがこの夏、夏期大学を機会に、待望の高知行が実現された。講義は朝夕の二回で、日中は全く自由な時間が得られたので、寅彦の「遺跡」巡りをすることが出来た。その中には、桂浜も含まれていた。
桂浜は、高知近郊の遊覧地になっていて、坂本龍馬の銅像や、桂月、貢太郎の碑で、よく知られている。平凡な海岸で、一方に断崖の岩が見られるというくらいのところである。しかし外海の色が濃く、砂と細石の色が美しい。しかし高知の日盛りのことであるから、石を探して、海浜をさまよう気力はなかった。