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なかざとかいざんの『だいぼさつとうげ』
中里介山の『大菩薩峠』
三田村 鳶魚
「日本及日本人」1932(昭和7)年10月15日号、11月1日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,523 字 · 27 页
大名・旗本といわず、大百姓・大町人にしても、子供のために別に住居を拵えておくほどなら、その子供が沢山下駄の脱いである出入口へは行かないようになっているはずでもある。要するに作者は、大名生活も知らず、百姓生活もよく知らないから、こんなことを書くのでしょう。
五六五頁になると、お銀がお君に向って、「まあ、お前、三味線がやれるの、それは宜かつた、わたしがお琴を調べるから其れをお前の三味線で合せて御覧」と言っている。気取った生活をしている人間なら、「三味線がやれるの」なんていう、野卑な言葉を遣うはずがない。しかしこれはもともと百姓なんだから、身分のない娘とすれば、そういうふうに砕けた方がいいかもしれないが、それにしてもこれは砕け過ぎていて、甲州の在方の娘らしくない。それほど砕けたかと思うと、「お琴を調べるから」という。お台所のお摺鉢がおがったりおがったり式だ。おの字の用例を近来の人はめちゃめちゃにしている。めちゃめちゃにしているのではない、御存知ないのであろう。すべてのことを差しおいて、この短い会話だけ眺めても、一方では琴におの字までつけるに拘らず、一方では「やれるの」