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ここのつのかぎ
九つの鍵
野村 胡堂
「少年時代」1949(昭和24)年1月~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,349 字 · 42 页
「ありがとう、そう言ってくれるとほんとうに心強いよ、ぼくは一晩悩み抜いて何んとなくこうボーットしたような心もちなのだ」「そうだろうとも、無理もないよ。ところで、仕事を始めるなら、一分間でも早いほうがいい、先ず、ぼくの気のついた事から話してみようか」
「そうしてくれ」
狩屋三郎は誠一と向い合って、その先を促しました。狩屋三郎は五尺七寸のみごとな体格ですが、ラグビーの選手だけに筋肉質で、ギリシャ彫刻のアポロのように端麗な青年、大学で数学を専攻しているので、頭の良さも無類と言われております。
それに対して植野誠一は、背は高くありませんが、照国のように肥って、色白で愛嬌者で、いつでもニコニコしている気のいい青年です。年は三郎より一つ下の十九、大学では文学を専攻しておりますが、頭のいいことは決して狩屋三郎に劣りません。
「先ずゆうべ愛ちゃんが、屋上に釣り上げられた時、入口のドアはたしかに閉っていたと言ったね」
「まちがいはないよ、表も裏も厳重に閉っていて、人がはいったようすも出たようすもないよ、ことに裏の入口などは、扉の内外に建築材料が一パイ積んであって、それを片づけなければ扉は開けることもできなかったのだ」