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ここのつのかぎ
九つの鍵
野村 胡堂
「少年時代」1949(昭和24)年1月~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,349 字 · 42 页
照国の誠一は、屋上の庭園の端っこまで歩み寄って、胸壁から下をのぞきながら、こんな大変なことを言うのでした。
「できないこともあるまいよ」
そのうしろから首を出して、狩屋三郎も、大胆なことを言います。四階の上の胸壁から、舗道までは十二メートルはあるでしょう。気の弱い者はのぞいただけでも眼まいがするのに、こういううちにも身仕度をした狩屋三郎は、さっそく実行に取りかかって、胸壁に手をかけると、身をひるがえしてもう建物の外へ出ております。
「大丈夫か」「たぶん」
二本の足は早くも四階の窓庇を踏むと、次の瞬間には手が雨樋を伝わって、スルスルと三階のバルコニーへ、そしてつづいて手と足の早業は、二階の窓わくを伝わって、五分と経たないうちに、狩屋三郎の身体は軽々と番町の往来に立っておりました。
しばらく屋上から見おろしている誠一と無言の合図を交した狩屋三郎は、改めて玄関から――妙な顔して迎える山裏金司と警官たちに軽く会釈して、階段を踏んでもとの屋上――誠一のそばに立ったのは、それから又二三分の後です。
「それでみんなわかったよ、悪者は愛ちゃんを宙釣りにして、一度この屋上に引上げ、君が裏へ廻ってゴトゴトやっている間に、もう一度綱でおろし、地上に待っている仲間の者に鉤をはずさせ、綱を引上げてから、今度は自分で、今君がやった通り