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くたにやき

九谷焼

中谷 宇吉郎

「理学部会誌」1924(大正13)年11月21日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,535 字 · 13 页

青空文庫

と口癖のように、褒めていた石野竜山のことを思い出して、裏通りの小さい店を探して行ったこともあった。子供の時の記憶よりも、ずっと鮮やかな立派な赤(赤というのは朱のことであるが)を出してあった。こんなことにでも、進歩の見えるということは、非常に嬉しいことである。湯呑の獅子の尾にこの赤を使ってあったが、余り立派なので、買いたくて耐らなかったが、五円いくらというので、止して帰ったのを覚えている。

私はまた、金沢時代にN氏という画家の家へよく遊びに行った。不折の門人だが、金沢へ来てから、日本画特に南画に趣味をもって、筆致の雄はなくも、軽快な色と頭とで、十分好きになれる絵を描いていた。油絵の方は月並だったが、こっちの方はよかった。遊びに行くと、よく二時か三時頃まで腰を据えて、そして達磨の話やら鳥和尚の話やらをやたら沢山聞いて来た。

此処で結晶焼の菓子鉢を見た。今は帝室技芸員とかになっている金沢の人が、随分永々苦心して得た焼で、器物の上の方につけてあった釉薬が、焼いている間に適当に流れ落ちて面白い縞をつくり、所々に薬が結晶して、同心円の繊細な花模が出来ているのである。