轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ちぶさ

乳房

宮本 百合子

「中央公論」1935(昭和10)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,932 字 · 56 页

青空文庫

然しマア、いろいろの証拠によって、こちらには分っていることだから許可します」

重吉は白紙で送られているのであった。

終点から引返しになるそこの電車は空いていた。日の当る側の座席を選んで四角な大きい白木綿の風呂敷包をわきにおいて腰かけ、それに肱をかけながら長くのばした小指の爪で耳垢をほじったりしているモジリの爺さんのほか、乗客はまばらである。前部のドアの横に楽な姿勢でよっかかっている年輩の車掌が、手帖を出し、短くなった鉛筆の芯を時々舐めながら何か思案している。市電の古い連中では株をやっているものが少くなかった。肩からカバンを下げていても、そうやって自分ひとりの世界の中に閉じこもっているその老車掌の自分中心にかたまった顔つきを見ていると、ひろ子の心には重吉からはじめて来た手紙の一節が無限の意味をふくんで甦った。重吉は、なかで注意して行っている健康法をしらせ、さて、外でも変ったことがあるだろう。歴史の歯車はその微細な音響をここには伝えないが、この点に関しては、何等の懸念もない。そう云ってよこした。何等の懸念もない。――だが、ひろ子はその不自由に表現されている言葉の内容を狭く自分の身にだけ引き当てて、自負する気にはとてもなれなかった。