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ふたつのいえをつなぐかいそう
二つの家を繋ぐ回想
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,480 字 · 37 页
母は静かに、自分の深い感動を制し、一言も悦びは云い表わされない。然し、三人で、落付いた昼餐をし、立ち入らない話をする間に、自分は彼女の和らいだ心を、まざまざと感じた。それが、不安になり、不自然を覚え始めた自分の心にも、云い難い安息、流れると自覚し得ない程、身についたヒーリング・ウォーターとなって滲み通って行くのだ。
私は、とり戻せた平静を感じて帰宅した。けれども、夕刻に近く帰って来たAに其、突然起った今日の出来ごとを告げる時、口吻には、自ら、迷惑げな響が加えられた。
Aがそれを、何方かと云えば、だらしないこと、不快の分子の多いこととして感じるのを、心が、我知らず先廻りをして仕舞ったのであった。
斯様にして、自分と林町との間に丈は、皮膚の傷が自ら癒着するように、回復が来た。
一度、固執を離れ、自分の芸術と云うことを抜きにして逢って見れば、自分達母娘は、流石に何と云っても血で繋ったものである。彼女も会うことは嬉しく、自分も、楽しい。平常ほど繁々ではないが、又、折々自分は林町へ行くようになった。西洋間に坐り、自分の家には、殆ど全然欠けて居る趣味的な圏境にゆっくり浸ること丈でも、自分を可成り牽くことなのである。