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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
女が、自分の人生の道をもちたいと願っている心、中国の女学生が国の独立のために役だとうと決心している心は、こんな風なよそよそしい、有名人の持芸で、何ものを加えられるというのだろう。伸子は、年長者としての親切のない態度へのおどろきと自分の機智に満足している有名さへの軽蔑で、本来は素朴で好意的であるべき会に主賓となっている評論家を見つめた。
黒服の小柄の人が立って、ノートを見ながら早川閑次郎の話を丁寧に通訳した。伸子がきいていると、通訳者の丁寧な通訳ぶりそのものに、ひそめられているある感情がうけとれた。通訳の半ばから、女学生たちの群の上にはっきり動揺があらわれた。一人の茶っぽい服を着た女学生が自分の席から、
「シェンション」
と呼んで手をあげた。通訳の人は、ノートを見ながら抑揚のつよい中国語で話しつづけ、左手の掌でその女学生の発言を柔らかくおさえるようにしながら、しまいまで通訳した。
「シェンション!」
「シェンション!」
「シェンション!」
その声々は、伸子の動悸をたかめる響きを持っていた。中国の女学生たちのせきこんだ感情が実感された。おっしゃい! どんどんおっしゃい! 伸子は、眼をきらめかせて、手をあげている中国女学生たちを見た。