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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

……」

自分がそういったことで、伸子自身にも一層現実がはっきりした。本当に! いつだってそうだ。いいことは、わるいこととのたたかいの間につくられて来るのだ。

「まちがった力をどけなけれゃいいことはあり得ないとしたら、なんで正しさを防衛するの? 右の頬っぺたをぶたれたら、左の頬っぺたまで出す? わたしはいやよ。保さんは?」

「そういう場合なら、僕だって出さないと思う」

「でしょう? だもの……」

しかし、保は内心で、そうでない場合もある、とがんこに考えているのだ。それが伸子によくわかった。

こうして何かいっていればいるほど、保の不思議に抽象してものを考える癖につきあっているようで、伸子はますます落着けなくなった。伸子がその考えかたを否定していうにしろ、つまりはそれも抽象的な話であることはおなじなのだから。――もっときついシュッ! と泡の立つような話。保がどうしてもむき出しに自分の感情の底をわらずにはいられなくなるような、そういう人生の話。伸子はそれを求めた。保の人間性の根っこをつかまえて、その上皮にはりめぐらされたあいまいなものをひといきに破ってしまう、そういうものこそ保に必要なのだ。