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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
なにが、そういう種類のことがらだろう。伸子は、自分たちの生活のぐるりからそれを見出そうとするしかなかった。越智と母との普通でない交渉。それについて保と自分とでしゃべる勇気は伸子になかった。それならば、きょうのように、美しい小枝を中心に兄が見せた一種の雰囲気を、弟であり、女の子の友達のない保がどう思ってみたか。伸子にはいうまでもなく保の微妙な心もちが映っていた。和一郎が保と正反対の飄然さをつよくあらわしはじめて、余りうちで暮さないようになったのは、弟である保から感じる圧迫感の反射だということを、保が知ったとして、保がどうなろう。――
客間のなかはすっかり薄暗くなった。青葉はずれの鈍い光が、四角い紫檀の卓の一角と、白い支那焼の灰皿のふちを細く光らせているばかりで、奥の椅子にふかくかけている保の顔は、伸子のところからほとんど見わけられなくなった。窓ぎわにいる伸子は、逆光でぼんやりシルエットを浮き上らしたまま、二人の姉弟は灯をつけないその部屋にかけていた。保をむき出しにしてやるちからが自分にないということを伸子は自分に承認しかねる撞着を感じながら……。