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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
そうして整理された古着、古布類は、佐々の田舎の昔なじみの農家であるおかめばあさまのところに送られた。おかめばあさまは、それをつくろって子や孫にきせ、その役に立たない分はこまかく裂いて機にかけた。風呂場の足ふきや、畳廊下のしきものになる厚いくず織が、二年に一度ぐらい佐々の家へ送られて来た。
伸子は、いまにもなんとかいいたそうに、ちらり、ちらりと指環のきらめく手でぼろをわけている母を見た。が、とうとういいそびれた。多計代は、多計代らしく越智とのこころもちを決算した。心をかたくし、軽蔑によって自分のうける傷をかるくすませている。そこに、女の年齢と、夫人として生きて来るうち、いつか身についた不思議な厚かましさがある。伸子にはそう思えた。だけれども、保はどういうことになるのだろう。伸子はそのことをしりたかった。いままでどおり、保は越智とつき合ってゆくのだろうか。本当に人間として越智から影響されるのは若く受けみな保だと伸子は思った。その保の身に即して、多計代は自分の心がへたばかりの苦い思いを、どう結びつけて見ているのだろう。
多計代のほとんど毅然としたという風な美しい横顔には、伸子がそこに求めているこまやかなニュアンスが微塵もなかった。