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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

本当にいぶかしそうに、全く子供のようにそういった。伸子は瞬間何といっていいのかわからなくなった。母は知っているだろうか。彼女の秘蔵の保の、こんなこころを知っているのだろうか。

「保さんの部屋へゆきましょう、ね、いいでしょう」

伸子は、母と保と二人へのいじらしさ、せつなさ、越智への嫌悪で、熱でも出る前のような悪寒を感じた。

保が机に向ってかけ、伸子は、小さな折畳椅子をのばして机の横にかけた。保らしく、注意ぶかく電燈の位置が按配されていて、小さい紙が眼への直射をさえぎるように下げられている。見ると、机の上に自分だけの日課表があるだけでなく、うしろの本箱の上の鴨居に細長く紙がはってあって、それが、日課の進行表になっていた。青と赤との鉛筆で、それぞれ違った長さの横線がひかれている。

「保さん、どうしてこんなにキューキューやるの?」

伸子は、少しあっけにとられてその表を見た。

「みんなこんなことしてやしないでしょう? この前来たときは無かったわね」

丁寧に鉛筆のしんを削りながら保が、

「僕、この頃時間を無駄にするのは下らないことだとつくづく思ったんだもの」

といった。