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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

それも、伸子にそうも思えるというだけで、彼の作品から直截にわかることはできなかった。

そのようにこみ入ったそのわからなさを、伸子は、自分の生活にもどこかでつながったものと感じた。その意味で自分にもボンヤリした不安はあるということが出来ると思った。自分だって、よりよく生きたいとねがい、痛切に生きることを感じながら生きたい、と思っていることはわかっているが、それならばどういう風にしてそれを実現してゆくかときかれて、答えられるようなへんじは伸子になかった。伸子は、現在の生活に感じている不満についての側から話すことは出来た。けれども、そこから育つ新しい方法については、わかっていなかった。素子はロシアへ行くときめた。伸子自身はどうなるだろう。のこるだろうか。ゆくだろうか。それもわかっていない。金銭の問題を別にして、自分の心の必然としてわかっていないのであった。

伸子は、自分の生活にあらわれるそんな様々のわからなさ、自分流のボンヤリした不安が、ほかのひとのところにはないのだ、と思うことは不可能だった。文壇の沈滞ということが、この二三年いわれつづけて来ている。