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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

そこには、幼い二人の遺児もつらなっていた。静かに動いている弔問者の列に加わって歩きながら、伸子は、作家武島裕吉をじかに感じられなかった。重大な儀式がとり行われるような場合にことに際だってあらわれるその家の格式のきびしさが、万端にみなぎっていた。それは、古風であるとともに世俗的であり、そういう雰囲気のうちで、葬送される武島裕吉の感傷的に柔かい相貌が映されている棺前の写真を眺め、焼香するとき、伸子はつい涙をこぼした。武島裕吉が生きつづけられなくなった生活環境の矛盾そのものが、上流人らしい老若の顔々となり、威儀を正した喪装のそよぎとなってそこに立ち並んでいた。――

多計代は、また自分を抑えられないように、その作品で知っている作家たちの名をあげた。その人々も来ていたか、ときいた。

「ねえ、お母様、全体がまるでちがうのよ。普通立派なお葬式とか何とかいう、そういうのとは、ちがうのよ。ね、だから、もうきかないでさ」

「それゃ、もちろんそうなはずですよ」

そして、

「本当に、相川良之介というひとは、独特だった……覚えているだろう、伸ちゃん。あのひとがうちへ来たとき……」