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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
つよく、わからない、と思おうとしている伸子の感情はいわば強いてもそのわからなさに踏み止まっている、というところがあった。相川良之介の死。「ある旧友への手紙」。その感銘ぶかい葬儀からかえったばかりの伸子の神経には、保の土蔵への引こしを、ただ偶然のことと思えないような過敏さがあった。土蔵好きになった、という保の心持そのものに不吉感を感じるのであった。
伸子は、言葉にいえないその不吉感を、自分に認めることさえ恐れた。そういう風に感じたりすることは、わるい文学趣味だと思おうとした。
伸子は、またガラガラとひどい音をたてて網戸をあけ、それをしめて、土蔵から出て来た。出た途端に、ボオッと炎暑でやけた外気が体につつみかかって来るのがわかった。半地下室の方が涼しいことは全く事実なのだった。
「見えなかったわ」
伸子は、食堂にいる多計代のわきの出まどに腰かけた。
「保さん、いつから、あんなしゃれたこと工夫したの?」
「さあいつごろだったろう……なにしろ、ことしの暑気は実際ひどいものね、無理はないよ。わたしも二階はほてりで寝苦しくて閉口だ」
扇風機が多計代のよこてから風を送っていた。