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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

「政治的な意味があるんだね」

と云った。

「案外、諒解が必要だ、というようなことなのかもしれない」

ソヴェト革命記念祭のお客に、日本から国賓が招待されたとき、その人選や連絡のために斡旋した文化連絡員がいる。素子はその外国人の名をいった。

「それゃ民間の女でゆくのは、私たちがはじめてなんだから、一応面倒なのもわかるけどね」

きいている伸子は、次第におこった顔つきになって行った。

「わたしたちが、もしいわゆる無産派でないからっていうなら、それこそ馬鹿らしいことだと思うわ。そういう立場でさえあれば、すべて素姓がたしかだとでもいうの?」

「しかしね、ぶこちゃん」

いつもに似合わず、素子の方が沈着に、亢奮している伸子に向っていった。

「無理のないところがあるのかもしれないんだ。むこうとすれば、そもそも日本というものにたいしては用心ぶかくなるわけもあるだろうしさ」

そういわれれば、伸子にもわかるところがあった。日本の政府は一九一七年からシベリアへ出兵して、ウランゲルやコルチャックとともに、ふるいロシアがソヴェトに変ってゆく道を妨害しつづけた。国交が回復したのは、伸子たちが老松町からその郊外の家へ引越して来た時分のことであった。